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ペット保険の約款には必ず「免責金額」という項目があります。しかし、この項目の意味を正確に理解している加入者は多くありません。
免責金額を見落としたまま保険に加入すると、「少額の通院では保険金がほとんど出ない」という事態になります。特に慢性疾患で頻繁に通院する犬の場合、免責金額の設定が保険の実質的な価値を大きく左右します。
免責金額とは何か
免責金額とは、1回の診療(通院・入院・手術)について、飼い主が必ず自己負担する金額のことです。治療費から免責金額を差し引いた残りに、補償割合が適用されます。
計算式
保険金 =(治療費 − 免責金額)× 補償割合
具体例
治療費8,000円の通院、補償割合70%の場合
| 免責金額 | 保険金の計算 | 受け取れる保険金 |
|---|---|---|
| 0円(免責なし) | (8,000 − 0) × 70% | 5,600円 |
| 3,000円 | (8,000 − 3,000) × 70% | 3,500円 |
| 5,000円 | (8,000 − 5,000) × 70% | 2,100円 |
| 10,000円 | (8,000 − 10,000) → 0円 | 0円(治療費が免責以下) |
同じ「70%プラン」でも、免責金額の設定によって受け取れる保険金が2,100〜5,600円と2.7倍の差が生まれます。
免責金額が「実害」になるのはどんなケースか
ケース1:慢性疾患で少額の通院が多い
外耳炎・皮膚炎・てんかん投薬管理など、1回5,000〜8,000円の通院が月1〜2回続く場合。
月2回通院、1回6,000円 × 12ヶ月 = 年間144,000円の治療費
| 免責金額 | 年間の受け取れる保険金(70%) | 実質的な補償率 |
|---|---|---|
| 0円 | 100,800円 | 70% |
| 3,000円 | 63,000円 | 43.8% |
| 5,000円 | 25,200円 | 17.5% |
免責3,000円があるだけで、実質的な補償率が70%から43.8%に落ちます。「70%プランに入っているのに実態は44%しか戻ってこない」という状況です。
ケース2:治療費が免責金額以下
治療費が免責金額を下回った場合、保険金は一切支払われません。
- 免責5,000円の保険で、治療費4,000円の通院 → 保険金0円、全額自己負担
- 免責3,000円の保険で、治療費2,500円の診察 → 保険金0円、全額自己負担
少額の通院が多い犬では、保険証を持っていても「使えない」場面が頻繁に発生します。
免責金額は保険料にどう影響するか
免責金額が高い保険ほど、保険会社のリスクが下がるため保険料が安くなります。
小型犬・70%プラン・月額保険料の目安(2歳)
| 免責金額 | 月額保険料 |
|---|---|
| 0円(免責なし) | 2,300〜2,800円 |
| 3,000円 | 1,800〜2,200円 |
| 5,000円 | 1,400〜1,800円 |
| 10,000円 | 1,000〜1,400円 |
免責0円と免責5,000円では月400〜1,000円、年間4,800〜12,000円の差があります。
免責「あり」と「なし」、10年間の損得を計算する
前提:慢性皮膚炎で年間15万円の通院費
免責0円(月2,500円の保険料)
| 項目 | 計算 | 10年間の合計 |
|---|---|---|
| 治療費 | 月2回×6,250円×12ヶ月×10年 | 1,500,000円 |
| 受け取れる保険金 | 6,250円×70%×24回×10年 | 1,050,000円 |
| 支払った保険料 | 月2,500円×12ヶ月×10年 | 300,000円 |
| 実質負担(治療費−保険金+保険料) | 750,000円 |
免責5,000円(月1,600円の保険料)
| 項目 | 計算 | 10年間の合計 |
|---|---|---|
| 治療費 | 月2回×6,250円×12ヶ月×10年 | 1,500,000円 |
| 受け取れる保険金 | (6,250−5,000)×70%×24回×10年 | 210,000円 |
| 支払った保険料 | 月1,600円×12ヶ月×10年 | 192,000円 |
| 実質負担(治療費−保険金+保険料) | 1,482,000円 |
免責0円の実質負担75万円に対し、免責5,000円は148.2万円。免責0円と免責5,000円では10年間で73万円以上の差が出ます。
保険料は免責5,000円のほうが年間1万円以上安い。しかし10年間の保険料差は約10.8万円に対し、受け取れる保険金の差は84万円。保険料の安さでは到底埋められない差です。慢性疾患で通院が多い犬には、免責0円プランが圧倒的に有利です。
免責「あり」が有利なケースもある
手術1回で数十万円のような高額・単発の治療であれば、免責5,000円の影響は相対的に小さくなります。
手術費用50万円の場合
| 免責金額 | 保険金(70%) | 自己負担 |
|---|---|---|
| 0円 | 350,000円 | 150,000円 |
| 5,000円 | 346,500円 | 153,500円 |
| 10,000円 | 343,000円 | 157,000円 |
手術費用50万円では免責0円と10,000円の差はわずか7,000円。保険料の差(年間1万円以上)のほうが大きいため、「大手術のみに備える」なら免責ありのほうが保険料を抑えられてお得なケースがあります。
免責金額の選び方フロー
免責0円を選ぶべき人:
- 慢性疾患(皮膚炎・外耳炎・てんかんなど)リスクが高い犬種を飼っている
- 月1〜2回以上の通院が見込まれる
- 少額通院でも確実に保険を活用したい
免責あり(3,000〜5,000円)でも問題ない人:
- 普段は健康で、急な大ケガ・手術に備える目的
- 月1回以下の通院しか見込まない
- 保険料を抑えることを優先したい
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 免責金額の意味 | 1回の診療で必ず自己負担する金額 |
| 慢性疾患への影響 | 免責3,000円で実質補償率が70%→44%に落ちる |
| 保険料との関係 | 免責が高いほど保険料は安くなる |
| 慢性疾患リスク高なら | 免責0円プランを選ぶ |
| 大手術のみに備えるなら | 免責ありでも保険料節約になる場合がある |
「補償割合70%」という数字だけ見て選ぶと、免責金額の影響で実態が大きく違っていることがあります。免責金額は補償割合と同じくらい重要な数字として必ず確認してください。